技術コラム : オシロスコープ 縦と横の分解能
投稿日時: 2019-11-20 10:10:17 (3692 ヒット)
オシロスコープという波形測定の基準器について 電圧(縦)―時間(横)の測定を考えます。 オシロスコープ(データーロガーも含む)は、 人間の本能的に理解し易い、時間経過で電圧がどう変化したかを グラフ化してくれます。 もちろん、電気の世界での動作なので回路上では、MHzやGHzの信号もあり、 時間軸(横軸)の分解能は、ns 以下が必要になってきます。 (この辺は、ナイキストの定理でも説明しています) 電圧軸(縦軸)は、もちろん分解能が、細かい方が良いのですが 縦横どちらも高分解能というのは、不可能です。 ![]() オシロに搭載されているA/Dで 8bitが現在でも標準です。 8bit(2の8乗の分解能)つまり、1/256の分解能があるということです。 1V/div 設定では、±4V 8V/256=31.25 mV 刻みの目盛で波形を見ると いうことです。 12bitあれば、8V/4096=1.95mV刻みの目盛で見ることになり 8bitの16倍の分解能になります。 ここで気をつけないといけないのは、波形を複数出すのにレンジを上げて、波形を 小さくすると分解能が落ちます。 みじん切りする、玉ねぎが小さいと切りにくくて荒くなるイメージです。 ![]() 2V/divとして 上半分に波形を出すと、7bit128分解能 つまり1bit(チビット)損をします。 更にアンプのリニアリティも問題になるので、できれば、フルスケールに近い形で 波形は測定する方が正確です。 アンプのリニアリティもフルスケールでしか精度保証していません。 ただ、最近のオシロスコープでは、縦軸分可能 16bit 20GS/s とか いうものもあるようです。 この場合、メモリ―も100Mワード以上あり、大変なことになります。 (価格も大変なことになっています) 従来、オシロスコープは縦8bit分解能、 サンプリング 500MS/s程度で十分でした。(バンド幅200MHz) このあたりに各メーカーの測定器が揃っていました。 測定波形をグラフに置き換えると、縦軸と横軸のメモリの細かいグラフに信号を 長く書いてくれればじっくり解析できそうです。 ここで問題なのが、長く取ったデータの表示方法です。 従来の液晶表示は高速で波形を出すために500点の表示に圧縮して表示しており 10M(10,000,000)のメモリ―があっても、0.005%の情報しか表示できず、 拡大表示で波形を探すことになります。 こうなると、宝さがしです。 ![]() ここで、もう一つ重要な項目が トリガ条件です。 出力の状態をモニターする場合は、AUTOで走らせておけば、 現在の状況が見えます。 特異な現象が出た場合、その瞬間を記録したい場合、止めて記録する条件 (トリガ条件)を決めて設定すれば波形を止めてみることができます。 一番簡単なトリガは、レベルトリガで、設定したレベルの信号がくれば波形を 捕捉保持します。 この場合、POSエッジ(下から上への変化)か NEGエッジ(上から下への変化) もしくは両方を選ぶことによりトリガ・ポイントで波形を保持しますが、 デジタルの良さは、トリガ・ポイントの前もデータが取れます。 デジタル・オシロスコープは、トリガがいろいろな種類で選べるものが 多くあります。 (今どき、アナログを探す方がたいへんですが)オシロスコープのトリガ回路は、 捕捉回路とは別に専用回路で、条件を高速に判別し波形を捕まえます。 例えば、パルス幅が指定より狭いとか広いとかで捕捉できます。 トリガは、波形という獲物を捕らえる罠と言えます。 ![]() 波形の補足条件がはっきりしておれば、トリガ条件をしっかり決めて 短いメモリ―で波形を見ればいいのですが、 とりあえず、全部とってから考える場合はロングメモリ―です。 メモリーには、いつでもデータがあり、トリガが来たら、その前後のデータを 連続で保持します。 もちろん、トリガから後だけ長く取ることも可能ですし、トリガからある一定の時間を おいて波形捕捉もできます。 ![]() 混乱しやすいのは、トリガ条件には、AUTO NORMAL SINGLEがあります。 AUTOは、時間軸を設定すれば、トリガが来なくても一定周期で波形補足を更新します。 NORMALは、トリガが来ないと波形補足を更新しません。 SINGLEは、一度トリガがくれば、波形を保持し次にトリガがきても波形補足を更新しません。 もし、STOPがあれば、STOPを押したときに波形補足を止めます。 長々と書きましたが、オシロスコープはDMMと並んで基本中の基本の測定器と言えます。 中国製のオシロも増え、ネットで買えるオシロまであります。(恐るべしアマゾン) ネットで買えるオシロもよいのですが、アクセサリーやシステムに組む場合を考えると 少し高いですがある程度名の通ったメーカーをお勧めします。 (アッと、うちの会社は、キーサイトをお勧めします。) 間欠的な信号を捕えるセグメント・モードもあります。 |
投稿者: axis
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